茨城県内らばるレトロ

緑色丸型地名看板追う


との始まりは2021年1月。茨城県内の大学を受験するため、ルートの事前確認を兼ねてはじめて水戸市を訪問した時のこと。国道にレトロな看板が建っているのを発見した。緑色の丸い看板に、白い文字で「水戸市袴塚」と書かれていた。この看板の古めかしさに心を惹かれた。

 

事に大学に合格し、同年の春に水戸市に引っ越した。当時はママチャリでのサイクリングに熱中しており、笠間や大洗なら余裕で行動圏内だった。

 

間市の友部地区を走っていた日のこと、袴塚で見たものと同種の看板を発見した。そこには「友部町随分附」と書かれ、合併前の地名表記が残っていた。訂正がされていないということは、すでに県や市町村の管理下からは外れた「ただの看板」に過ぎないだろう。もしくはもともと県の管理でなく、ライオンズクラブなどが設置した可能性もある。

 

かし予想は裏切られる。桜川市に設置されているものは比較的新しいばかりか「桜川市」と、平成の大合併で出来た新しい自治体の名前が書かれていた。

 

の看板は何なのだろうか。SNSでの情報も皆無に等しく、そもそも検索ワードが思い浮かばない。随時情報を募集したい。


1.緑丸形看板(発見順)

水戸市 袴塚

発見日:2021年1月26日

場 所:水戸市袴塚三丁目3番地先

    国道118号他「袴塚3丁目」交差点

地 名:水戸市…1889年成立。日本初の市の一つ。

    袴 塚…袴塚町などが住居表示実施、1969年5月成立。

概 要:塚の字がちょっと変。右に突き出る部分がなぜか無い。厚生労働省が公開する「異体字検索漢字リスト」にも載っていない形。

 袴塚の読みは「はかまつか」だが、濁って「はかまづか」と言う人も多い。なお、袴塚の塚の字は「土に冢」が正しい字で、現行標識は正しいものが使われる。なお、市内の赤塚も「土に冢」が正しいが、駅名は一般的な塚が使われる。

友部町 随分付【撤去済み】

発見日:2021年8月27日

場 所:笠間市随分附

    県道30号線 随分付バス停付近

地 名:友部町…1955年成立、2006年廃止。

    随分附…由来不明の難読地名。

概 要:かつての自治体名が書かれている。随分付の「分」の上がくっついているのがチャームポイント。なお、正しい字は随分であるが、付近のバス停名はこの緑看板と同じく随分の表記。

 随分附の読みは「なむさんづけ」であるが、その名はアイヌ語由来とも、仏教由来ともいわれるが、真偽不明。

 2024年12月5日、現地で撤去を確認。

眞壁町 塙世

発見日:2022年2月12日

場 所:桜川市真壁町飯塚

    県道7号線 「真壁庁舎入口」交差点付近

地 名:真壁町…1954年成立、2005年廃止。

    塙 世…東部を現市名の由来になった桜川が流れる

概 要:眞壁町塙世と書いてあるが、実際には塙世の東側、飯塚に位置する。壁町と、旧字体が使われているあたり、相当な年代物ではないだろうか。

 塙世の読みは「はなわぜ」である。なお、合併前は真壁町(まち)塙世であったが、合併後には桜川市真壁町(ちょう)塙世というマイナーチェンジをしている。そもそも看板があるのは飯塚だけどね!

桜川市 真壁町下谷貝

発見日:2022年2月12日

場 所:桜川市真壁町下谷貝

    県道7号線

地 名:桜川市…2005年成立。真壁町、岩瀬町、大和村が合併。

    下谷貝…筑西市に面し、真壁地区西端の大字。

概 要:まさかの復刻版。字体は現代風ながらも、体裁は他のものと遜色なし。留め具の錆び方からして、もともとは塙世のような古いものが設置されていたのだと推測。昭和にあこがれる平成生まれ、ここにあり。

那珂町 下江戸

発見日:2024年11月10日(2024年12月3日再撮影)

場 所:那珂市下江戸

    県道62号線 茨交「下江戸」バス停付近

地 名:那珂町…1955年成立、2005年廃止。瓜連町と合併。

    下江戸…江戸氏にゆかり。後述。

概 要:ほかのものに比べて、ほとんどが縦横の直線で構成されている上に細い。水戸のものと比べると「戸」の字が明らかに違う。そして珂の字がバランスが悪い。

 どうでもいい話だが、自分も一時期この看板の字のように可能な限り縦横の線だけで漢字を書くことにはまっていた。製作者とお友達になれそうだ。

 ここで下江戸について。室町末期から160年ほど水戸を支配した江戸氏。この時代から「水戸」という地名が使われ始め、別名は江戸であった。江戸氏は、ここ下江戸に拠点を置いていたそう。水戸の街を形成するきっかけになったのは江戸氏である。

 

参考文献:https://adeac.jp/mito-lib/text-list/d900010/ht000290(水戸市立図書館ウェブアーカイブ)

瓜連町 静

発見日:2024年11月10日(2024年12月3日再撮影)

場 所:那珂市静

    県道62号線 静神社前

地 名:瓜連町…1955年成立、2005年廃止。那珂町と合併。

     静 …常陸国二ノ宮である静神社がある。

概 要:現在は合併をし、那珂市静となっている。合併前は県下で一番面積が小さな自治体で、人口は9,000人弱であった。

 静には常陸国二ノ宮である静神社があるが、ちょうどその目の前にこの看板がある。

八千代町 菅谷

発見日:2024年11月22日

場 所:八千代町大字菅谷

    国道125号「菅谷十字路」交差点付近

地 名:八千代町…1972年町制。白菜が有名。

    菅  谷…役場所在地。

概 要:ほかのものに比べて剥げているが、字は新しそうだな、とおもいながら撮影したが、1972年以降のものであることが八千代町の成立時期から確定した。また、固定具がほかのもの(鉄製)とは異なり、ステンレス製と思しきもので固定されている。いつのものなのだろうか。

 八千代町は白菜が有名だが、名前は聞いたことがない人が多いだろう。自分も驚いたのだが、国内一番の生産量であり、冬に首都圏に流通する白菜のほとんど(9割)が八千代町産のものだそう。つまり関東でなべ料理に入っている白菜はほとんど八千代町育ち。すごすぎる。


2.緑丸形看板に影響を受けただろう亜種

協和町 横塚

発見日:2024年2月15日

場 所:筑西市横塚

    県道7号線(国道50号旧道)

地 名:協和町…1964年成立、2005年廃止。合併し筑西市に。

    横 塚…国道50号下館BPの起点がある。

概 要:丁寧に英字や町のマークまで記載されているのに今はない自治体というのが悲しいこと。協和町は、下館市ほか周辺自治体と合併して筑西市になりました。

 おそらく緑丸形看板に影響を受けただろうこの形。撮影当初は「丸形なんてめずらしいなぁ」程度に撮影したものの、旧自治体名だし、緑看板との関係もあるかもしれないし、撮影してよかった!

小美玉市 小岩戸

発見日:2024年11月23日

場 所:小美玉市小岩戸

    国道6号

地 名:小美玉市…2006年成立。合併前の自治体から一文字ずつ取った。

    小岩戸 …旧美野里町。ひょうたん美術館がある。

概 要:これはほぼ確で緑丸形看板の流れを汲んでいるでしょう!高速道路でもないのに緑色が使われ、昨今の道路標識には決まって組み入れられる英字表記もない。おそらくほかの標識のフォーマットを流用しただろう四角形はコスパ?

 小美玉市は小川町、美野里町、玉里村が合併してできた自治体で、市名はそれぞれの頭文字。合併で新しい地名が生まれることは多いが、ここまで音の響きもよく、字の見た目も意味も綺麗なものは稀有な気がする。基本的に瑞祥地名は好きではないが、小美玉の名前は好きだ。


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